夕暮れ時の公園にて、ひとり寂しくブランコに腰を降ろした香奈は、ともすれば際限なく塞ぎ込みそうになる心をどうにか紛らわせるべく遊具を揺らしてみたものの、まるで鉛のように重くなってしまったそれは一向に回復の兆しを見せてはくれなかった。
決して自身が試験勉強や範囲対策を怠ったわけではない。が、しかし――ある意味、そうであった方が幾分か気持ちは楽だったかもしれないと後悔を覚える程に今回の失態は頂けなかった。単なる確認不足、云わば答案用紙に自身の氏名を書き忘れたのと同程度のケアレスミスで大事な期末テストにて赤点を取ってしまったのだから。
起こってしまった事は仕方がない。次で取り返せばいい――と。
思考はどうにか気持ちを切り替えようとそういった励ましを幾度となく繰り返しはするのだが、肝心の精神は未だ曇り落ち込んだまま、深い靄の中に取り残されている。
美しい茜空を見上げていたはずの視線も無意識のうち重力に引かれ、いまや視界いっぱいに広がっているのは乾いた砂の地面と、力を半ば失いだらりと投げ出された自身の両脚のみであった。
「ねえねえ、お姉さん」
と、その時――ふいに伸びた小さな影が、俯いた視線の中へと割り込んでくる。
「顔、かわいーねえ♡」
自身の気の強さや自己肯定感の高さを一切隠そうともしない声色に誘われ思わず顔を上げると、そこに佇んでいたのはファンシーショップに並んでいるようなチープながらも女児の心を確かに惹きつけるチェリーの髪留めに、ぴょこりと小さく跳ねる小動物の尾を思わせるようなツインテールといった出で立ちの幼い少女だった。
「んん〰、まさに食べ頃ってカンジ♡ 肌もキレーだし、唇も美味しそうな色してる……♡ リップとか塗ってないのにソレはすごすぎ! ポテンシャルたかーい♡」
「ええと、あの……」
突如現れた謎の少女はというと、実に不躾な仕草でこちらの顔を至近距離からまじまじと覗き眺め、矢継ぎ早に品評を並べては一人でウキウキとはしゃぎ、なんとも楽しそうである。
「もしかして、迷子かな。お母さんとはぐれちゃったとか」
尋ねてはみたものの、彼女はただニヤニヤとその口端を意地悪く歪めるだけで、こちらの質問に応じる気配は一向にない。
「はじめまして。うちは、りさって言いま〰す♡ これからァ、お姉さんとたっくさん楽しいコトするつもりなんでヨロシク♡」
「た、楽しいこと? 遊んであげたいのは山々だけど、こんな時間にりさちゃんみたいな歳の子が遊んでたらおまわりさんに怒られちゃうよ」
悲壮感の一切感じられない言動から窺うに、保護者とはぐれて途方に暮れている、というわけではなさそうだが――しかし、冒険心が強い故に自覚なく迷子に陥ってしまっている可能性もある。
ここは最寄りの交番にでも案内して、大人の指示を仰ぐのが一番だろうと懐からスマートフォンを取り出しかけた、その瞬間。
「それじゃあ、いっただっきまーす♡」
一際はしゃいだ少女の無邪気な声音が、どうしてだか鼓膜からではなく、脳内へと直接響いてきたかのような奇妙な感覚に囚われた香奈の視界は突如、ブラックアウトした。
「ん、ァ……」
「やっぱり、想像どーりだった♡ お姉さんの唇も舌もおいしー♡」
奇妙な熱を孕んだ衣擦れの音と、弾んだ声。組み合わせとして適切ではないであろう、相反するその二つの音色にはまるで現実味というものが感じられなかった。
故に香奈は、自身の口腔内を蹂躙する強引でありながらいやに官能的な肉厚の感触も、擦れ合う互いの肌が妙な熱を帯びて汗ばんでいる質感も、すべては意味のない虚構であるに違いないとぼんやり思考を巡らせていた。
だが、与えられる快楽が下腹で明確に形作られていくその度に、うっとりと蕩けていたはずの意識が覚醒へと近づいていく。
「ンン、あ……っ」
瞬間、五感が目覚め、強烈な痺れにも似た感覚が全身へと勢いよく波及する感覚に苛まれてしまう。
知らず涙の滲んだ双眸を薄く開けてみると、先程公園で対峙した少女の幼くもどこか妖艶な表情が驚くほど間近まで迫っているではないか。
「んんっ、ァ……。う、ああ……ッ?」
夢か現か、などと思案を巡らせる余裕などない。
覚醒と共に香奈の全身へと纏わりついたその感覚は、未知なるものであったにも関わらず、どこか心の奥底で長年求め続けていたような――そう、それは背徳と快感だった。
「ああっ、どうして……。ンぅ、なにここ……っ」
どうにか視線を巡らせてみたものの、薄明りの中で確認出来たものといえば全く見覚えのない天井と、滑らかなシーツの感触のみである。
「ここはねえ、んふふ……♡ ホテルだよ♡」
幼い顔には似つかわしくない、少し長めで肉厚の舌先をちろちろと蠢かせながら眼前の少女はニタリと微笑んだ。
「ホ、ホテル……? な、なんで!」
「やだなあ、お姉さんがうちのことホテルに連れ込んだんじゃん? 覚えてないの〰?」
あまりの返答に、眩暈を覚える。
――自分が、年端も行かぬ少女をホテルに連れ込んだ?
そんなはずがないと必死に記憶の糸を手繰り寄せてはみたものの、どうしてだか公園で少女と対峙した後の展開を一切思い出す事が出来ないでいた。
なぜ、忘れてしまったのだろう。否、本当に私は自らの足で少女を伴い恐らくはラブホテルと思しきこの場所へと向かったのだろうか? 混濁する思考の中、ただ焦燥だけが目まぐるしく飛び交っている。
「やだ、ごめんなさい……! 私、覚えてなくて……っ」
「ひっど〰い! んふふ、でも許してあげる♡ だってぇ、お姉さんとこうしてホテルでイチャイチャしてたらァ、うちもその気になっちゃったし♡」
言いながら少女はゆっくりと、まるで自らの仕草を見せつけるかのようにまずは香奈の上着、今度はスラックス、そして――。
「あ、ちょっと……!」
あろうことか、下着をも脱がし始めたのである。
「だめ、りさちゃん……! 待ってよ、どうしてそんなことするの」
見知らぬ少女といつの間にかホテルの一室で妖しく絡み合っているという異様な光景と、彼女が繰り出す言動のひとつひとつにすっかりと惑わされていた香奈は未知なる戸惑いに思わず声を上擦らせてしまう。
肌から際限なく滲み出しては、薄い膜のように皮膚へと張り付く熱っぽい感触がどうにも落ち着かなかった。
突き放さなくては、逃げ出さなくては。しかし、どうしてだか拘束などされていないはずの四肢が思うように動かない。
まるで目に見えない蔦か何かにでもベッドへ縫い留められているかのような不可思議な感覚に囚われ、香奈はもはや平静を取り戻せなくなっている。
「あはは♡ イイ感じに興奮してきたみたいだね〰♡ お姉さんの肌、ちょっとずつピンク色になってきた♡」
気が付けば一糸纏わぬ無防備な姿へと剥かれてしまった香奈の裸体へと視線を落としながら、こちらへと覆い被さった少女は嗤い、その双眸を満足げに眇めてみせた。
「ねえ、分かる? お姉さんってば興奮しすぎておっぱいの谷間にい〰っぱい汗かいちゃってるよ♡」
ふいに伸びてきた小さな指先が、控えめながらも女性として確かな膨らみを築きつつある乳房の間へ、つうっと滑り込む。
「ッ、ああ……!」
少女はまるで、落書きでも描くかのような仕草で無邪気にその伸ばした指先で香奈の肌を辿り――やがて辿り着いたのは、未知なる感覚に喘ぐ下腹の更に奥。この先の展開に何かを期待するかの如くヒクヒクと物欲しげに収縮を繰り返す膣であった。
「ほらほらァ、興奮してんじゃん。スケベなお姉さん♡」
肥大しつつある陰核を指の腹で小刻みに擦られ、思わず爪先が跳ね上がる。
陰唇が何かに痺れてぎゅっと収縮するような感覚は、これまで生きてきた中で初めて経験する異常事態だ。
加えて、どこからか漂う桃のような瑞々しくも官能的な香りが鼻先を擽るたび、理性を少しずつ溶かされていくような錯覚にまで見舞われてしまう。
流されては駄目だ、多少乱暴な手段になろうとも彼女を引き剥がさなければ――。脳内で響き続けていたそんな警鐘は、やがて煩悩に浸食され跡形もなく消え失せていった。
もっと知りたい、もっと欲しい。
「あ……っ。りさ、ちゃん……!」
はしたなく心の奥底で繰り返しながら、香奈は気が付けば悦びに瞳を潤ませ、強請るような視線で少女の笑顔を見上げていた。
「お姉さんってばァ、もうビショビショじゃん♡ つるペタ幼女のうちにエッチなことされて、興奮しちゃったんだ〰? 真面目なフリして、変態のロリコンだったんだね。こわーい♡」
「ちが、っ……! ちがうの、これは……」
「なにが違うの〰? だってローションいらないくらい、お姉さんのお股はぬれぬれになっちゃったんだよ。悦んでる証拠じゃん♡」
言いながら、彼女は自らの指先で次から次へと溢れる香奈の愛液を掬い上げると、それを潤滑油代わりに陰核へと念入りに塗り込み施す愛撫を更に激化させていった。
「あァ……ッ! ン……、あ、ん゙ん゙……っ」
未知の悦楽がせり上がるたび、あまりにはしたない嬌声が零れそうになる。どうにかそれを堰き止めようと下腹に力を込めてはみたものの、細かく振動するような、一見でたらめのようで緻密に刺激を計算された愛撫を陰核へと与えられ続けるうち、もはや香奈は全身のどこにも力を込める事が出来なくなってしまったようだ。
「あ、どうして……! やだ、きもちいいの止まらない……っ」
「そうだね、お姉さんの感度が良すぎて気持ち良いの、ずーっと止まんないね♡ ほんと、スケベな身体だなあ……」
耳朶に吹き込まれる少女の声音も、こちらの高揚と共に甘くどろりと粘着質に蕩け始めているのが分かる。
熱っぽい吐息が鼓膜に流れ込むたび、弄ばれ続けている自らの性器がじくじくと疼くような感覚に襲われた。
熱くて、擽ったくて、痺れるような――限りなく毒に近いそれは、今の香奈が味わうにはまだ早すぎる禁断の情欲だ。
「あはっ♡ お姉さんのクリトリス、沢山なでなでしてあげたらこんなに大きくなっちゃった♡ 気持ち良いでしょ? 気持ち良いよね? ま、いちいち聞かなくてもお姉さんの顔見てたらバレバレだけどさ♡」
嘲笑交じりの指摘すら、もはや愛撫となんら変わりのない刺激となって香奈の爪先を激しく疼かせてしまう。
一体、自分はいまどんな表情を少女の眼前へと晒してしまっているのだろう。あまりの快楽に泣いているのか、それとも知らず知らず満面の笑みでも浮かべて善がり狂っているのか――。
「やだ、見ないでぇ……! 恥ずかしいから、りさちゃんに見られてるの恥ずかしいからあっ……!」
泣き叫ぶように吐き出した懇願を、少女は残酷にも一笑に付した。
「見ないで、じゃなくってぇ……。もっと見ての間違いじゃない? だってお姉さんは恥ずかしいコトされるとすっごく感じるみたいだし♡ ほら、聞こえるでしょ? お姉さんのココ、もうぐちゃぐちゃですっごい音してる……♡」
瞬間、陰核への愛撫がより一層、激しさを増した。
BGMどころか、建物の外には確かに存在しているはずの喧噪すら届かない静まり返った部屋の中、弾けるような水音だけがみっともなくこだまする。
自分の内側から垂れ流された快楽の証が、熱く迸り大きく爆ぜていく。
「イけ、イッちゃえ♡ 幼女の手マンでざこ負けしちゃえ〰♡」
「あああっ、んァ……! う、ん゙ぅ……っ」
散々と摩擦による刺激を与えられた陰核は、殊更に強い痺れを覚えたのと同時に香奈の全身を激しく痙攣させた。
電流でも流し込まれたのではと思わず不安を覚えてしまうほどに、全身の筋肉が言うことを聞かなかった。
もはや香奈自身ではこの肉体を制御する事が出来ないのだ、と。
諦念に苛まれながら薄く目を開いてみると、薄くぼやけた視界の中で、相変わらず少女は意地の悪そうな、しかしとびきり愛らしい笑顔を浮かべて強烈な快楽の余韻の中に揺蕩うこちらの様子を見下ろしていた。
「じゃあ、今度はしっかりナカで感じてみよっか♡」
「え……?」
「大丈夫、お姉ちゃんの大好きなクリトリスも同時に嬲ってあげるから♡」
ずぷり、と。収縮を繰り返す膣の中に何かが潜り込んでくる。それは勝手知ったると言わんばかりの不躾さと奇妙なほどに的確な仕草で内壁を掻き乱し、呼吸を整えかけていた香奈を再び強烈な快感の奈落へと突き落としたのである。
更に――あろうことか少女はというと、逆の手で再び香奈の陰核を捉えると、先程と同じように小刻みの摩擦を加え始めてしまった。
「やだ、あああっ! ン、ううっ」
「あはっ、気持ちよさそー♡ お姉さんの顔も声も、さっきよりもっとエッチでトロトロになってるよ♡」
勢いに任せて追いつめるような激しさはない。だが、先ほどと比べて性質が悪いことに、的確な快楽を適切な愛撫で断続的に与え続けているような少女のそれは奇妙なほどに手練れていた。
「ァ、お……っ♡」
己の声帯から、無意識のうちに絞り出される下品な嬌声が恥ずかしくて仕方がない。その上、そんなはしたない声が零れるたびに少女が耳元でくすくすと愉快そうに笑い声を零すものだから余計に居た堪れなかった。
「ねえ、お姉ちゃんはどっちが好き? 中をこうちゃってグチャグチャ掻き回されるのがいいのか、それともクリストリスをこうやってなでなでされる方が好き? どっちがいいのか言ってくれたら、好きな方でいーっぱい気持ち良くしてあげてもいいよ♡」
「あ、ああ……ッ! んっ、ォ……。わ、わかんない……っ」
もはや自分がどちらの刺激で身悶えているのか、判別など付けられるはずもない。
「わかんない、っ……! ああっ、どっちも好き……!」
「え〰、どっちも好きなのお? 欲張りなざこお姉さん♡」
「んっ、ンン! だって、どっちもきもちいいからァっ♡」
「ふふ、そっか♡ じゃあ、両方ともいーっぱい虐めてあげるね♡」
そこからはもう、滅茶苦茶だった。
再び唇を塞がれ、舌を根元まで引き出された上での絡み合いを強いられた挙句、先程からずっと鼻先を擽っていた桃の香りが流し込まれた彼女の唾液と共に食道から胃の方までねっとりと下っていったような奇妙な背徳を覚え、更なる興奮を覚えてしまった。
「んっ、あ……っ! お゙、ンンっ」
「お姉ちゃんってば、もう全部ドロドロじゃん♡ このままホントに溶けてなくなっちゃいそう……」
内壁を抉るように掻き混ぜられ、爪先がぴくんと跳ね上がる。
もう、何もかもが保てそうになかった。
「ンあああっ、んあ゙ああああ……っ」
途端に、視界が明滅する。
体中の水分が蒸発してしまったかのような強烈な渇望と、筋力をすべて失ってしまったかのような脱力感が恐ろしくも心地良い。
「はーっ、はァ……っ♡」
何かを必死に取り戻すかの如く、香奈は胸をひたすらに上下させながらただ呼吸を繰り返す事しか出来なかった。
失ったのか、手に入れたのか。解放か、それとも果てのない呪縛の始まりか――。
ふいに訪れた絶頂は、香奈の思考を混乱へと陥れてしまう。
だが、様々な思惑が混じり合う中で突如香奈の心身を急速に蝕んだものがある。それは、前触れのない昏睡だった。
「あ……」
強烈な余韻に濡れそぼる内股を震わせながら、香奈は半ば強制的なまどろみの中へと堕ちていく。
瞬間、こちらを相変わらず見下ろしていたはずの少女の背後に、御伽噺にでも出てくるような翼が大きく広がったような気がした。
「ン……っ、あれ……?」
次に意識を取り戻した時、香奈は自室のベッドに横たわっていた。
先ほどまで自分は見知らぬ少女にホテルで弄ばれていたはずなのだが――どうにも記憶が混濁している。
あれから、自分はどんな手段で家路に着いたのだろうか。そもそも、勘定などはどうしたのだろう。まさか、例の少女が立て替えたのだろうか。否、そんなはずはない。そもそも、お互いに年齢を誤魔化せるほど大人びてはいないのだから。
深呼吸を幾度か繰り返した後、導き出した答えはというと。
「もしかして、夢だったのかな」
よくよく思い返してみれば、奇妙な展開だった。
もしかすると、期末テストで自らが引き起こしたミスによる精神的ショックが引き起こした突拍子のない悪夢だったのかもしれない。
そうでなければ、説明がつかないのだ。幾度も意識を失った挙句、同性の、それも幼い少女とホテルで情事に耽るなど――。
「っ、私ってばどうしちゃったのかな」
とりあえず、水でも一杯飲んで気持ちを落ち着かせようとベッドを抜け出した、その瞬間。
「あ、う……っ」
身に着けた下着が酷く濡れていることに気が付き、思わず立ち止まる。その上、下腹部が妙に熱っぽく疼いて仕方がない。
どくり、どくりと。夢の中で少女に散々と嬲られた膣内と陰核が物欲しげに脈打ち始めたのが分かる。あの劣情は夢の中へと置き去りにしたはずなのに、なぜ現実世界でぶり返すのか。
これは、一体どういうことだろう。
「なに、これぇ……っ」
この時、自らの子宮を象るような淫紋が密かに浮かび上がっていた現実を、香奈は知る由もなかった。
「にひひっ、いい餌見つけちゃった♡」
自らの肉体変化に戸惑う少女の悩ましい姿を窓越しに眺めながら、りさは愉快げに肩を揺らしてみせた。
淫魔に魅入られた人間の末路は、言うまでもない。性も根も尽き果てるまで、徹底的に搾り取られるのだ。
「食べ頃になったら、またご飯にしなきゃ♡ この調子だと、すぐにつまみ食い出来ちゃうかも……?」
まだ見ぬ魅惑のひと時に思わず舌なめずりをしたその後、りさはそっと窓際を離れ、夜の闇へと溶けていった。